せんせいあのね324

せんせいあのね。昨日、部屋の片付けをしてたら、お母さんの方のおばあちゃん
の写真が出てきたの。お母さんね、こんなエピソードがあったんだよって話して
くれたの。
「りゅうが1歳半くらいのときね、おばあちゃんは死んだんだけどね、もうダメ
かもっていう電話があったのが夕方ですぐにきてくれってことだったの。支度を
して急いで行ったの。とりあえず、りゅうの支度だけしてね。車は乗れないから
電車で行ったんだけど、ちょうど通勤ラッシュでね。しばらく様子を見てたんだ
けど、二駅だったし、待っていてもこれからがラッシュ本番だから乗るかって決
断して乗ったの。案の定、りゅうはぐずっちゃったのね。そしたらそばにいたお
じさんがこんなラッシュ時に小さな子供を乗せるのが非常識だって怒ったのよ。
確かにそうなんだけど、こっちも急いでいたしね。理由もわからず怒鳴りつけな
くてもいいじゃないかって思ったよ。周りに迷惑をかけたのは申し訳なかったけ
ど、もっと迷惑なやつがいるじゃんかって思ったよ。まぁ、でも駅にすぐついて
降りたからいいけどね。」
っていうのがあったらしいの。他のことだったら時間をずらすとかしたけど、お
ばあちゃんの死に目に会いたかったんだっていってたよ。後悔したくなかったん
だって。その後、すぐに病院に行って、間に合ったみたいだよ。でもね、ずっと
ぼくにごめんねって謝ってたんだって。満員電車の辛さはお母さん、学生の頃に
経験してたから悩んでたみたい。でも無理に乗ったから最後、おばあちゃんの死
に間に合ったんだもんね。よかったね、お母さん。