相模トラフでも再び巨大地震の可能性あり

東日本大地震、予想外の場所で起きた

2011年3月16日(水)

 3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は大規模な津波を引き起こし、原子力発電所に重大な被害を与えた。近代的な地震記録が可能になって以来最大規模となった今回の地震だが、以前から可能性が指摘され恐れられてきた“巨大地震”とは違うというのが専門家の見解だ。

 この見解の根拠は、マグニチュード9.0という規模が巨大地震の基準に達していないというわけではなく、発生場所の相違にある。地震の専門家はかなり以前から、推定約14万2000人の死者・行方不明者を出した1923年の関東大震災と同じ、東京に比較的近い断層帯での巨大地震発生を警戒していた。

 日本は太平洋プレート、オホーツクプレート、フィリピン海プレートがぶつかり合う、地質構造上複雑な場所に位置している。マグニチュード7.9〜8.4と推定される1923年の関東大震災は、日本列島の下にフィリピン海プレートが潜り込む、東京から見て南西沖にある断層帯「相模トラフ」で発生した。11日の地震はこれよりはるかに北、太平洋プレートとオホーツクプレートがぶつかる日本海溝南部で起きている。

「多く(の専門家)はここで巨大地震が起きるとは予想していなかった」と、オレゴン州立大学にあるアクティブテクトニクス海底マッピング研究所(Active Tectonics and Seafloor Mapping Laboratory)に所属する地球物理学者クリス・ゴールドフィンガー氏は電子メールでの取材に対し回答した。同氏は予想外だった理由を、日本海溝は大地震の発生源ではあるものの、今回のような巨大地震は、少なくとも記録に残る過去数千年の歴史では例がなかったためだと説明する。

 11日に起きた巨大地震の力はすさまじく、これにより日本列島の位置が約2.4メートル移動したと、アメリカ地質調査所(USGS)は報告している。

 予想外というのは、日本海溝震源とする地震が少なかったという意味ではないと専門家は解説している。「歴史を通じて、日本北部では地震が発生している」と、オレゴン州コーバリスにあるオレゴン州立大学名誉教授で地質学者のロバート・イエーツ氏は指摘する。

 ノースウェスタン大学の地球物理学者セス・スタイン氏によれば、問題は、過去の地震について長期の記録が不足している点にあり、そのため任意の地点で最大どの程度の規模の地震が起こりうるかを予測するのは困難とのことだ。現代の科学的な記録ほど正確ではないにせよ、1100年前からの良好な地震記録が残る日本でさえ事情は同じだとスタイン氏は語る。

 また、今回の震源よりも南方にある相模トラフでも、再び巨大地震が起きる恐れがあると、専門家は警告する。

 だが、科学者が地震リスクを測定する手段は過去の地震の記録だけではない。オレゴン大学のイエーツ氏によれば、例えば東京大学地震専門家、池田安隆氏は高精度のGPS計測機器を用い、日本海溝沿いで各プレートにかかるひずみの蓄積速度を測定しているという。

 池田氏はこれらの測定値を、地震によって解放されるひずみと比較した。イエーツ氏によれば、池田氏の研究からは「過去100年間に観測された地震では、この地域にかかるひずみ圧力すべて(を解放する)には不十分」なことがわかり、「将来的に過去の例よりも大きな地震が起きる可能性が示唆されている」という。その一例が3月11日の巨大地震だ。

 また、巨大地震が発生した後で予兆と判明したものもある。11日の地震と同じ地域で3月9日に発生したマグニチュード7.2の地震だ。

 マグニチュード7クラスの地震の場合は、より規模の小さな余震が後に続くのが普通で、さらに大きな地震が後に起きることはまれだ。このクラスの地震で、最初の地震よりも大きな地震が後に発生するケースは、20回に1回ほどとされている。

 結局のところ、「地震は予告なしにやってくる」という、アメリ連邦緊急事態管理庁FEMA)のクレイグ・フューゲート局長が3月11日のブリーフィングで発した言葉が的を射ていると言える。どれだけ災害に強い建築物を構築したとしても、「津波地震の揺れによる被害がなくなることはないだろう」と同長官は語っている。