せんせいあのね330

せんせいあのね。ぼくね、小さい頃に死にかけたことがあるの。それはね、
家の近くの川なんだけどね。前の日に上流で雨が降ってるからおばあちゃん
が川に近付いたらダメって言ったんだけど、少しなら大丈夫だろうって数人
で遊びに行っちゃったの。行ったときは流れも穏やかで水かさもそんなに
多くなかったから夢中になって遊んでたの。そしたら靴が脱げちゃってね。
それはおばあちゃんが買ってくれた靴だから川で遊んだのがばれると思って
必死に拾うとしたの。その時、どんどん水が増えていってね。ぼくはいつの
間にか川の中だったよ。ぼくは死ぬんだって思ったよ。気がついたらそんな
に遠くない浅瀬の岩にいたみたい。お友達がおばあちゃんを呼びに行って、
無事に助けられたんだけどね。お友達が数人同時に不思議なものを見たって
言うの。温かい光がぼくを包み込んで浅瀬に運んだんだって。それを聞いた
おばあちゃんが、ここの川の守り主だよって、話してくれたよ。昔はどこに
でも神様がいて守ってくれたんだって。でも今は神様を崇める人が減って、
神様もいなくなったと思ってたんだって。だからぼくはあれから川の主さん
にいつも感謝して手を合わせているんだよ。